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ファッションライターLulu.の「美しいは嬉しい」vol.17
ファッションって知的好奇心を満たし喜びをもたらしてくれるんです。内面のいちばん外側がファッション。
(本記事でご紹介するアイテムは、松屋でお取り扱いのないものもあります。)
2025/07/08
宮崎駿の想像力が織り込まれたタピスリーに会いにオービュッソンへ 。"L’imaginaire de Hayao Miyazaki en tapisserie d’Aubusson"
こんにちは。
クルーズ県の小さな町オービュッソン。ここに来たい!と地図にピンを立ててから何年経っただろう。
やっと、フランス中部にある「オービュッソン国際タピスリーセンター(CitéInternationale de la Tapisserie à Aubusson)」を訪れることができました。
オービュッソン国際タピスリーセンターは、600年以上にわたりタピスリーが織られてきたこの地において、タピスリーの伝統と技術(サヴォアフェール savoir-faire)の保存、そして後継者の養成と発展を使命とした、2016年設立の公的機関。
2009年には「オービュッソンのタピスリー」がユネスコの世界無形遺産に登録されています。
「オービュッソンがジブリを織る」このニュースが流れたのはたしか2019年。2017年のJ.R.R.トールキンの原画(14点の大型タピスリーと 2点の小型タピスリー)を織り上げたプロジェクトに続く、「オービュッソン、宮崎駿の空想世界を織る(L’imaginaire de Hayao Miyazaki en tapisserie d’Aubusson)」。
美しいオービュッソンの街並み。
国際タピスリーセンターとスタジオジブリの間で協定が調印され、巨大タピスリーの制作プロジェクトが始動したのは 2019年。 5点の巨大タピスリーが制作されることになります。
とうとう会えた!ここで観たかった。
「ハウルの動く城(Le Château ambulant, 2004)」
そもそも 17世紀〜18世紀のタピスリーは本のような役割を担っていました。神話や物語等、一つの主題を連作で現したタペスリーは「tenture」と呼ばれ、同じ縁飾りをすることにより、どの物語か判別出来るようになっているそうです。
字の読めない者も、タピスリーが語る豊かさに包まれたんだろうな。巨大な織り(5.6mx3m)を前にすると、壮大な世界が広がってきました。
そう、今回の連作はタピスリーが本来持つ「語り部」としての役割を現代に甦らせたもの。
「呪いの傷を癒すアシタカ」《Ashitaka soulage sa blessure démoniaque》タピスリー(映画『もののけ姫』の一場面より)
機織り開始 : 2021年3月、織り上がり : 2022年3月25日
© 1997 Hayao Miyazaki / Studio Ghibli, ND 製織:Atelier Tapisserie Guillot(オービュッソン、2023年) © 2022 Cité internationale de la tapisserie コレクション © Photo: Studio Nicolas Roger
「カオナシの宴」《Le Banquet du Sans visage》タピスリー(映画『千と千尋の神隠し』の一場面より)
機織り開始 : 2022年1月、織り上がり : 2023年1月20日
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© 2001 Hayao Miyazaki / Studio Ghibli, NDDTM 製織:Manufacture Robert Four(オービュッソン、2023 年) © 2023 Cité internationale de la tapisserie コレクション © Photo: Studio Nicolas Roger
「夕暮れの動く城」《Le Château ambulant au coucher du soleil》 タピスリー(映画『ハウルの動く城』の一場面より)
機織り開始 : 2022年6月、織り上がり : 2023年4月21日
「ハウルの恐れ」《La Peur de Hauru》 タピスリー(映画『ハウルの動く城』の一場面 より)
機織り開始 : 2022年6月、織り上がり : 2023年6月16日
「メイとトトロのお昼寝」《La Sieste de Mei et Totoro》 カーペット下絵(映画『となりのトトロ』の一場面より)
機織り開始 : 2025年3月、織り上がり : 2026年
© 1988 Hayao Miyazaki / Studio Ghibli© 2024 Cité internationale de la tapisserie コレクション ©Photo: Studio Nicolas Roger
「“腐海”の秘密」《Le Secret de la Fukai》 タピスリー制作構想(映画『風の谷のナウシカ』の一 場面より)
機織り開始 : 未定、織り上がり : 未定
© 1984 Studio Ghibli - H
宮崎駿の世界を「織られた地」で観たい、と思い続けてきました。
パリでのソー・エルメス取材後、今年こそ足を伸ばしてオービュッソン!と計画していましたが、その間「もののけ姫」(大阪万博フランスパビリオン)と「千と千尋の神隠し」(愛知県美術館)が日本へ。
なんというタイミングの悪さよ。計画変更も考えましたが、とにかくハウルの世界に没入しに行こうと。
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大阪万博での展示に向け搬出されるタピスリー © Cité internationale de la tapisserie
ジブリ作品を、映像をタピストリーという静止画にする、これは前例のないこと。プロジェクトは心に響く一瞬を取り出し、具現化するという作業から始まりました。
織り手たちのガイドとなる重要な下絵(カルトン)の制作。
まず、糸(毛、絹、麻)と太さの選択がなされます。絹を使えば光沢が、糸が細ければ緻密さが得られます。が、緻密さを取れば、時間を要することに。
作品のサイズに合わせ、制作の所要時間とコストを見積もります。
「呪いの傷を癒すアシタカ」《Ashitaka soulage sa blessure démoniaque》 映画『もののけ姫』の一場面を基にしたタピスリー下絵の一部 © 1997 Hayao Miyazaki / Studio Ghibli, ND
技術的面を熟知し、作品の質感、イメージを想像する俯瞰力が必要とされる下絵の制作。
下絵は単なる拡大版であってはならない。
「デッサン上のごく小さなバラの花から始めたとして、それをよく考えもせず愚かしくも単に拡大だけしていったら、出来上がるのはキャベツだ」と表現されるほど。
下絵には糸の素材、太さ、色等、細かく指示が書き込まれます。(これはジブリ作品のものではありませんが)
その後、染色家は下絵のイメージに沿うよう糸を染めていきます。
「メイとトトロのお昼寝」《La Sieste de Mei et Totoro》映画『となりのトトロ』の一場面を基にした下絵に合せて色を選ぶ
© 1988 Hayao Miyazaki / Studio Ghibli © 2024 Cité internationale de la tapisserie
糸の太さ、その組み合わせにより生まれる世界が違います。
「カオナシの宴」『千と千尋の神隠し』を織る © 2001 Hayao Miyazaki / Studio Ghibli, NDDTM ©2021 Cité internationale de la tapisserie
例えば、経糸も緯糸も絹のように細い糸を使用すれば、密度高く細かい描写が得られ、経糸を絹、緯糸をウールにしたら、また違う表情が生まれます。
そして、ずっと裏側から作業を続けていた織り手たちが、初めてタピスリーの全貌を表から見る瞬間、それが「トンベ・ド・メティエ tombée de métier(織り上がりセレモニー)」。
「ハウルの恐れ」『ハウルの動く城』のトンベ・ド・ メティエ © 2004 Studio Ghibli, NDDMT ©Cité internationale de la tapisserie
1階に降りると、収蔵されている中で一番古いオービュッソン製のタピスリー、「千花模様の一角獣」が迎えてくれました。
Millefleurs à la licorne (Millefleurs with the Unicorn) 1480-1510
さ、動く城へ!
会いに来たわ。
陰影の表現、色合わせ!素晴らしく美しい。
亜麻やモヘア、ウール、レーヨンを組み合わせ異なる質感を表現。
美しいグラデーション。
90歳の老婆の外見に変えられてしまったソフィーが18歳の姿に戻るのは、素直に自分を認め、本来の輝きを取り戻した瞬間。
一連の作品から伝わってくるのは、「本当に大切なものは目に見えない」ということ。
人の数だけ真実があると思うし、それはとても尊いこと。真に違いを認め合うことができるのは自分だけの真実を抱きしめた時。
それがオービュッソンのタペスリーから私が受け取ったもの。
伝統を継承し、技術を保存し、感動を語り継ぐ。
美しいをありがとう。
La Posteを見つけたので、日本へカードを送ります。
美しいタピスリーの町オービュッソン。そしてヌーヴェル・アキテーヌ地方。
また来ます!
協力:フランス観光開発機構
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Lulu.
2010年~2021まで11年間、VOGUE JAPAN でブログを執筆。馬と博物学的世界、ムー的世界を愛し、不思議を視たい!と旅に出て、「好き」と「感動」を掻き集める。高校時代に障害飛越にのめり込み、今はたまーに外乗を楽しむ50代。現在はnoteで発信。
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