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ソムリエ郁子の​365日ワインの​旅 第3回 日本篇

ワインの​法律、​歴史、​造り手など、​たくさんの​知識は​ワインの​楽しみ方を​広げますが、​詳しくなくても​問題なし。
ワインは、​美味しい。​美味しい​ものは、​人を​しあわせに​する。

この​コラムでは、​松屋銀座の​ワイン売場​「グルマルシェ ヴァン」にて​日々、​ワインの​魅力を​お客様に​お伝えしつづける​「ソムリエ郁子」が、​ 気軽に​楽しめる​ワインの​お話を、​生産国ごとに​お届けしていきます。

プロフィール

ソムリエ郁子​(​そむりえ いく​こ)


ソムリエの​資格を​持つ、​松屋銀座の​和洋酒バイヤー。​お酒を​飲むと、​グラス1杯で​トリップできる能力​あり。​好きな​食べ物はりんご。​シードルや​カルバドスも​大好き。​最近​ハマっているのは、​娘と​地元の​銭湯に​行く​こと。

日本の​食卓に​優しく​寄り​添う、​日本ワイン。

国産ブドウのみを​原料とし、​日本で​製造された​ワイン、​「日本ワイン」。

世界の​名だたる​生産国の​ワインに​比べると​歴史が​浅く、​その​良さは​まだまだ​知られていないのが​実情ですが、​最近は​政治的な​会合で​使われたり、​また、​国際的な​コンクールで​賞を​受賞したりと、​今、​注目を​集めつつあります。

「日本ワイン」の​特長を​一言で​表すと、​「和食に​合う」と​いう​ことに​なるでしょう。

赤も、​白も、​繊細で​奥ゆか​しさが​ありながらも、​芯は​しっかりしていて、​食事に​優しく​寄り​添ってくれる・・・。​まるで、​大和撫子のようでも​あり、​郁子も​ぜひ見習いたい​ところです。

今回は、​そんな​「日本ワイン」に​ついてもっと​よく​知る​ために、​その​先駆けと​して​100年以上に​わたり、​日本での​ワイン造りに​取り組み続ける​サントリー社の​自社農園、​山梨県に​ある、​「登美の​丘ワイナリー」を​訪れてきました。

ソムリエ郁子が、​8月の​よく​晴れた​日に、​この​地で​実際に​見て、​聞いて、​触れて、​味わって、​感じた​ことを​レポートし、​皆様に​「日本ワイン」の​魅力を​お伝え​いたします。

ソムリエ郁子が​ゆく!​「サントリー・登美の​丘ワイナリー」

登美の​丘ワイナリーは、​豊かな​自然に​囲まれた​150haの​広大な​丘の​上に​ある​ワイナリー。​115年もの間、​ブドウの​栽培から、​醸造、​瓶詰め、​熟成、​販売まで、​一貫した​ワイン造りを​行っています。

標高600mの​高さに​位置する​ワイナリーからの​眺望は​大変素晴らしく、​山々が​連なる中、​一際​高い​富士山、​そして​甲府盆地が​眼下に。

1907年にかの​有名な​「赤玉ポートワイン」を​発売して​以来、​日本ならではの​美味しい​ワイン造りに​挑戦し続ける​サントリー。
2022年には、​「ワイン造りの​すべては​ブドウ畑から​始まる」と​いう​想いの​込められた​「FROM FARM」と​いう​コンセプトのもと、​日本の​風土の​中で、​造り手たちの​創意工夫と​愛情に​より、​土地ごとの​特長が​丁寧に​表現された​日本ワインを、​多くの​人に​届ける​ことを​目指すブランド​「サントリーフロムファーム」が​誕生。
ここ、​登美の​丘ワイナリーで​造られる​ワインは、​すべて​この​シリーズの​ものになるそうです。

ワインの​源、​自然の​恵みあ​ふれる​ブドウ畑。

はじめに​向かったのは​ブドウ畑。
25haもの​広大な​土地で、​ブドウの​栽培を​はじめワイン造りの​すべての​工程を、​なんと​たった​30人で、​ほとんど​手作業で​行っているのだそう!

登美の​丘ワイナリーの​ブドウ畑の​特長は、​雨が​少なく、​日照時間が​長い​こと。
雨が​多い​土地では​湿気も​多くなり、​カビの​病気が​発生しやすくなる​ため、​健全な​ワインが​造れなくなってしまうと​いいます。
また、​雨雲が​少ない分、​日照時間が​長くなるので、​ブドウは​たっぷり太陽の​光を​浴びて​糖分を​作り出すことができ、​それが​ワインの​美味しさに​つながっているとの​こと。

山を​切り拓いて​建てられた、​冷涼な​貯蔵庫。

続いて​貯蔵庫の​見学へ。

1950年代に​建てられたと​いう、​歴史を​感じる、​趣の​ある​建物。​山の​斜面に​貯蔵庫が​あると​いうのは、​大自然の​中の​ワイナリーならでは。
樽と​瓶、​それぞれの​熟成庫を​見学し、​いずれも​天然の​涼しさで、​ワインには​とても​良い​環境と​いう​印象を​抱きました。

登美の​丘ワイナリー自慢の​ワインを​飲み​比べ!

最後に、​ワインに​ついて​色々な​説明を​伺いながら、​数種類を​試飲。
やはり​ワイナリーを​代表する​「登美の​丘 甲州」​「登美の​丘 赤」​「登美 赤」の​3銘柄からは、​日本の​山梨県で​造られる​ワインならではの、​和の​テイストのような​ものを​ほんのりと​感じ、​登美の​丘の​テロワールに​触れられたような​思いが。

ソムリエ郁子×サントリー 登美の​丘ワイナリー栽培技師長・​大山弘平氏 スペシャル対談

「登美の​丘の​テロワールと、​もっと​遠く​へ」

今回、​ソムリエ郁子は、​登美の​丘ワイナリーの​栽培技師長・​大山弘平さんとお会いし、​登美の​丘ワイナリーならではの​ブドウの​栽培方​法や​ワイン造りに​かける​思いに​ついて、​お伺いしました。

ソムリエ郁子 ​大山さんは​栽培技師長で​いらっしゃるとの​ことですが、​主な​お仕事内容を​教えていただけますでしょうか?

大山さん ブドウの​栽培を​するとともに、​この​先、​サントリーが​どんな​日本ワインを​造っていったら​いいのかに​ついて​考え、​みんなと​目標や​ゴールを​決めています。​ワインの​良し悪しは、​100%ブドウの​品質で​決まると​言っても​過言ではないんですよね。​ほかの​お酒と​違って、​原料の​品質が​味わいに​直結するので、​私自身、​ブドウの​粒の​中で​ワインを​造っているような​イメージを​もって​仕事を​しています。

ソムリエ郁子 畑での​お仕事に​加え、​「サントリーフロムファーム」が​どのような​目的に​向かっているかを​お決めに​なっている、と​いう​ことでしょうか?

大山さん そうですね。​ワイナリーごとに​目指すものは​違うのですが。​サントリーでは、​産地ごとに、​各畑で、​「この​テロワールで​あれば、​こういう​良さを​持った​ワインが​できそうだ」​「こういう​ワインを​造りたい」と​いうのを​みんなで​話し合って​決めてから、​どんな​栽培方​法に​するか、​どんな​醸造方​法に​するかなど​逆算して​ワインを​造っていくんです。​それがもしかすると​ほかの​ワイナリーさんと​違う​ところかなと。

日本で​ワインを​造る、と​いう​こと。

ソムリエ郁子 テロワールと​いえば、​サントリーさんは​フランスの​ボルドー地方​メドック地区の​名門シャトー​「シャトー ラグランジュ」を​お持ちで​いらっしゃいますが、​登美の​丘の​テロワールと​いうのは、​メドック地区の​それに​近い​部分は​あるのでしょうか?

大山さん ​それは​おそらく、​全然​違うと​思います。

ソムリエ郁子 そうなんですね。

大山さん 気象条件や​土壌の​情報を​見ていくと、​風土や​環境が​全く​異なるなと。​メドックの​土壌は​礫​(れき)が​主役に​なってきますが、​登美の​丘の​土壌は​全体的に​粘土質で、​やや​水も​ちがいい。​また、​雨の​多さも​フランスとは​全然​違うので、​我々には​工夫が​いるんですよね。​ありのままの​生育環境を​受け入れるのではなくて、​その​粘土質の​土を​課題と​感じた​場合は​どうやったら​水捌け​よく​できるかに​ついて​考えよう、と​いう​風に。

ソムリエ郁子 なる​ほど・・・。

大山さん 例えば、​原則と​して​除草剤を​使わずに、​草が​生えた​状態の​畑で​作物を​育てる​「草生栽培」。​草を​根こそぎ切るのではなく、​大きく​伸びたら​刈り込む、と​いうのを​繰り返しやり続け、​草の​根に​付く​微生物を​増やすことに​よって、​自然の​力で​粘土質の​土を​耕し、​柔らかく​する​ための​工夫を​しています。​「シャトー ラグランジュ」とは、​いい​ものを​造る、と​いう​目標は​共通していますが、​我々は​この​土地に​合った​作戦を​考えながら、​そこに​向かって​日々​励んでいます。

「やってみなはれ」​精神が​息づく、​「登美の​丘 赤」。

ソムリエ郁子 先ほど、​そんな​登美の​丘ワイナリーを​代表する​赤ワインの​ひとつ​「登美の​丘 赤」を​美味しく​いただきましたが、​様々な​品種の​ブドウが​ブレンドされている​中で、​ボルドー地方などでは​補完品種と​して​使用される​ことの​多い​「プチ・ヴェルド」を、​主要品種に​持ってこられていると​いうのが、​個人的には​非常に​チャレンジングだなと​思いまして・・・。

大山さん そうですね。​まあ​これは​すごく​長い​レンジの​話に​なるんですが。​私は、​そも​そも​ブドウの​品種って​いうのは、​テロワールを​ワインボトルに​詰める​ための​手段だと​思っているんです。​ブドウの​品種​ありき、と​いう​ことではなくて、​まずは​その​土地の​テロワールを​飲み物に​変化させる​ために​最適な​ブドウが​必要なのであって、​そこから​品種を​選ぶ​必要性が​生じる、と​いう​考え方です。

ソムリエ郁子 なる​ほど。

大山さん​ ワインと​いう​名の​液体を​通して、​実は、​風土や​環境と​いった​その​土地の​特徴を​飲んでいる。​私は​ワインを​そんな​風に​捉えていて。​その上で、​今、​登美の​丘の​テロワールを​表現するのに​最も​適切な​品種は​何かと​いうと、​プチ・ヴェルドだった、と。​今から​40〜50年前、​ボルドーワインに​追いつけ追い​越せと​言っていた​時代には、​やはり​カベルネ・ソーヴィニヨンが​主体でしたし、​2000年代に​入ると​メルロに​移行してきて。​そして、​メルロも​厳しくなってきたと​いう​時に、​待っていた​品種が​プチ・ヴェルドだったっていう。

ソムリエ郁子 ​その​主要品種の​切り​替えと​いうのは、​地球温暖化など、​気候変動に​よる​ところが​大きいのでしょうか?

大山さん それも​あるんじゃないかとは​思います。​そして​我々は、​品種の​選択に​限らず、​栽培方​法や​醸造方​法の​変化なども​含めて、​その​時代の​環境に​合った​一番​いい​ものを​目指していっている、と​いう​ことが​言えると。

大山さん ・・・と​いっても​プチ・ヴェルドも、​もう​30年前から​植えて​たんですけどね。

ソムリエ郁子 そうだったのですね!

大山さん 我々の​大先輩た​ちが、​今の​世の​中の​ことを​予想しながら、​先駆的に​植えてくれていて。​それが​徐々に、​環境変化とともに​広がっていって、と​いう​ところですね。​なので、​チャレンジングだったのは、​90年代の​大先輩たちなんです。

ソムリエ郁子 なる​ほど・・・。

大山さん ただ、​サントリーは、​まさに​「やってみなはれ」精神と​いうか、​そういう​連続的な​挑戦を​ずっと​続けていて。​私たちは​そういう​思想や​哲学を​大事にしながら​100年以上​ワインを​造ってきているので、​私の​代でも、​今の​時代には​関係ないだろうなって​思うような​チャレンジを​するなど、​後輩たちに​バトンタッチを​していくと​いう​ことも​意識は​しています。

ソムリエ郁子 ​そんな​素晴らしい​考え方が、​脈々と​受け継がれているのですね。​「登美の​丘 赤」は​和の​お料理にも​きっと​よく​合うと​思うのですが、​大山さんの​おすすめの​召し​上がり方を​教えていただけますでしょうか。

大山さん プチ・ヴェルドは​力強い​味わいなんですよね。​タニックで​ボディにも​パンチが​ありますので、​お肉のような​ものが​いいかなと。​ただ、​カリフォルニアの​カベルネ・ソーヴィニヨンとか​チリワインくらい​濃い​ものではないので、​お肉の​中でも、​どちらかと​いうと​少し​お醤油を​使った​料理、​すき​焼きのような​和食寄りの​ものの​方が、​より​美味しさを​引き立たせてくれるかな、と​思います。

登美の​丘の​テロワールが​見事に​凝縮された、​「登美の​丘 甲州」。

ソムリエ郁子 白ワインの​「登美の​丘 甲州」に​ついても​お伺いさせてください。​こちらは、​「デキャンター・​ワールド・ワイン・アワード 2023」にて​「プラチナ賞」を​受賞するなど、​世界的な​評価も​非常に​高く、​大山さん​ご自身も​「世界最高レベルの​甲州を​造る」と​宣言されていますよね。

大山さん そうですね。

ソムリエ郁子 ​私も​個人的に、​やはり​あの​和柑橘の​香りの​ニュアンスが​とても​特長的だなと​感じています。​豊かな​味わいの​中に、​この​登美の​丘ならではの​テロワールが​感じられるのが​大変素晴らしいなと​思っているのですが、​「登美の​丘」の​白ワインの​品種に​ついては、​今後も​100%甲州で​いくと、​お考えでしょうか?

大山さん ​「登美の​丘」の​白に​ついては、​やはり​今は​甲州に​力を​入れている​ところは​ありますね。​甲州は、​山梨県で​歴史的に​長く​造られていて。​熟すのが​やや​遅い​品種なので、​温暖化の​影響を​受けにくいのと、​病気に​強い​一面も​あるので、​「登美の​丘」の​ブドウの​中では、​面積的にも​収穫量的にも​一番​多くなっていますね。

ソムリエ郁子 そうなのですね。​「登美の​丘 甲州」は​大変レベルが​高いので、​前々から、​日本の​食卓には​非常に​合うなと​感じておりました。

大山さん ​ありがとう​ございます。

ソムリエ郁子 ​大山さんは、​「登美の​丘 甲州」は​どんな​お料理と​楽しまれますか?

大山さん ​これが、​いわゆる​鰹だしのような​ものとけっこう​相性が​いいんですよね。​「登美の​丘 甲州」は、​ステンレスの​タンクできれいに​発酵させた​ワインに、​樽で​ゆっくり熟成させた​ワインを​14〜15%ほど​加えているんですが、​その樽で​造られた​ワインが​ふく​よかな​感じに​させてくれて。​あと、​アミノ酸や​旨味が​ほのかに​感じられる​ワインに​変化させる、​シュール・リーと​いう​製法を​採用しているので、​その​あたりの​同調性が​効いていると​いうか。

ソムリエ郁子 なる​ほどなる​ほど。

大山さん 例えば​水菜と​油揚げを​炊いたような​ものと​合わせるのも​おすすめです。​鶏肉のような​白系の​お肉とも​合うんですけど、​より​良さが​感じられるのは、​そういった​和テイストの​ものなのかなと。

ソムリエ郁子 やはり和の​食卓に!

大山さん なんだか​すごく​合うんですよね。

ソムリエ郁子 そうですね。​この​カボスの​ニュアンスと​いうのが、​「登美の​丘 甲州」の​香りの​中に​ちょっと​少し​感じられますよね。

大山さん そうなんです。​和柑橘の​雰囲気が​やっぱり​あって。

ソムリエ郁子 この​和柑橘系の​感じと​いうのは、​やはり、​登美の​丘の​テロワールの​特徴なんでしょうか?

大山さん そうですね。​我々は​標高600mの​畑で​甲州を​造っているので、​ブドウが​時間を​かけて​成熟し、​甘くなっていくんですよね。​それに​よって​アロマの​幅の​広がり、​多層的な​香りへと​つながっているのだと​思います。​仰るように、​和柑橘ぐらいの​香りから​始まって、​オレンジや​マンダリンと​いった​熟した​柑橘系、​そして​最後は​白桃くらいの​ところまで​感じられる。​それが、​標高が​高い​ところで​ゆっくり育まれた​甲州の​証と​いうか、​登美の​丘ならではの​テロワールが​表現できている、と​いう​ことなんじゃないかと。

ソムリエ郁子 仰る​通り、​非常に​多層的なんですけれども、​あまり​押しつけが​ましくないと​いうか。​ボディも​厚すぎず、​大変​控えめで​ありながら、​繊細な​香りの​変化が​楽しめる​ところに、​日本ワインの​真髄が​感じられると​いいますか・・・。

大山さん どうも​ありがとう​ございます。​甲州ってもともと​そんなに​力強くなりにくいんですよね。​糖度も​そこまで​上がる​品種ではないので、​とも​すると​薄っぽく​感じられると​いう​ことも​あり得る。​その​甲州を​世界基準まで​持ってくぞと​なった​時には、​やっぱり​ある​程度の​ボリューム感と​いうか、​味わいの​濃さみたいな​ものが​必要に​なると​考えていて。​そこを​目指し続けてきた​結果、​今回の​プラチナ賞受賞に​もつながってきているとは​思いますが、​単純に​濃い​ものを​造れば​いいと​いう​世界でもなく。​なので​そこは​さじ加減で、​バランスを​崩さない​程度の​ボリューム感を​目指して、​日々、​志を​高く​もって​取り​組んでいる​ところですね。

ソムリエ郁子 サントリー社と​して​求められる、​非常に​高い​水準の​品質を​保ちつつ、​尚且つ​この​繊細な​味わいの​部分も​しっかりと​表現されていると​いうのが、​本当に​素晴らしいなと。​それぞれの​ワインを​いただきながら​感じ入っておりました。

大山さん ​ありがとう​ございます。

美味しい​ブドウを​育むための​画期的な​アイデア、​「副梢栽培​(ふくしょうさいばい)」。

ソムリエ郁子 登美の​丘ワイナリーでは、​様々な​栽培技術を​用いて​ブドウ造りを​されているとお聞きしました。​その​中で、​大山さんが​最も​こだわられている​ものに​ついて、​お聞か​せいただけますでしょうか。

大山さん 自分の​意思を​込めて​始めたのは​「副梢栽培」ですね。​冒頭で​申し上げた​通り、​良い​ワインは​何から​造られるのかと​いうと、​良い​ブドウしかない。​じゃあ、​「良い​ブドウって​何?」って​いうのを、​みんなで​議論したんですよ。​そこで​導き出されたのが、​「質の​良い​二次代謝物が​豊富に​含まれている​ブドウこそが、​良い​ブドウだろう」、と​いう​結論でした。

ソムリエ郁子 二次代謝物、ですか?

大山さん 光合成で​作られた​糖や​酸と​いった​一次代謝物を​原料に、​ブドウの​中で​作られる、​ポリフェノールなどと​いった​物質の​ことです。​で、​その​二次代謝物を​増や​すためには​条件が​2つ​あって、​まず​ひとつ目は、​ブドウに​水分ストレスを​与える、と​いう​こと。​ブドウに​極力水分を​与えず、​喉が​渇いた​状態に​しておくと、​粒が​どんどん​小さくなると​同時に​糖度が​高くなるので、​身が​しまった​味の​濃い​ブドウが​出来上がるんです。

ソムリエ郁子 ブドウは、​この​喉が​渇いた​状態に​ある方が​美味しく​育つ、と?

大山さん そうなんです。​そして​もう​ひとつ​大事なのが、​ブドウが​成熟する​時期の​夜の​気温が​どれくらい​下がるかと​いう​ところ。​ブドウの​二次代謝物の​産生には、​最低気温が​どれほど​下がるかが​影響するんです。​でも、​だからと​言って、​我々は​神様じゃないので、​ブドウが​甘くなっていく​時期の​夜の​気温を​下げる​なんて​ことは​できない。

ソムリエ郁子 たしかに・・・!

大山さん ​そこで、​ブドウの​甘くなる​時期を、​秋の​涼しくなる​頃まで​遅らせれば​いいんじゃないかって​考えたんです。​普通に​栽培してしまうと、​7月の​下旬とか​もの​すごく​暑い​時に​ブドウが​甘くなろうと​するんですが、​その​タイミングで​甘くなり​始めると、​無駄に​エネルギーを​消費して、​色も​そんなに​濃くならず、​理想と​する​甘さにならないんです。​それが、​涼しい​時期に​甘くなる​スイッチが​入ると、​より​味も​色も​濃くなる。​その​原理に​基づいて、​甘くなる​時期を​わざとずらす方​法を​研究されてきた、​地元の​山梨大学さんと​一緒に​取り​組んでいるのが、​「副梢栽培」です。

ソムリエ郁子 なる​ほどなる​ほど。

大山さん​ ブドウの​芽は​4月頃に​出てきて、​5月に​かけて​ぐんぐん​大きくなっていくんですが、​6月に​わざと​その​枝の​先端を​切るんです。​そこに​すでに​実っていた​ブドウの​赤ちゃんも​一緒に、​パチンと。​そうなると、​ブドウは​焦って、​次の​芽を​出す。​これが​「副梢」と​言われる​もの​なんですが、​その​「副梢」に​新たに​実った​ブドウを​収穫するので、​約1カ月ほど​成長が​後ろ倒しに​なると​いうわけです。

副梢栽培で​育まれる​ブドウ。​8月末にも​かかわらず、​まだ​実が​青々と​している。

大山さん 2021年から​挑戦してきた​中で、​ここ数年の​メルロとは​比較に​ならない​くらい​高い​品質の​ブドウが​採れて。​その​副梢栽培で​育んだメルロを、​我々が​一番​自信を​持って​造っている​フラッグシップワインの​「登美 赤」に​初めて​ブレンドする​ことも​叶いました。​それだけ​画期的な​技術と​言えるので、​今後さらに​良い​ブドウを​育めるよう、​みんなで​精力的に​挑み続けている​ところです。

「日本ワイン」に​こそ​実る、​「人間の​工夫」。

ソムリエ郁子 数々の​試行錯誤を​積み重ねて、​確かな​味わいの​ワインを​世に​出されているのですね。​最後に、​今の​お仕事を​されている​中で、​大山さんが​一番やりがいを​感じてらっしゃる​ことを​お伺い​できますか?

大山さん ワイン造りって、​やっぱり​天候の​影響も​すごく​大きいんですけど、​その​中でも、​先ほどの​副梢栽培のように、​「こういう​課題が​あるので​こう​克服したいな」と、​自分で​考え、​実行に​移した​ものが、​確実に​中身品質に​反映されるので、​その​「人間の​工夫」みたいな​ものが​実った​時は、​やりがいを​感じますね。​おそらく​ヨーロッパなどで​造られる​ワインよりも、​その​「人が​手を​加える​要素」と​いうのが、​日本ワインは​強いんじゃないかと​思うんです。

ソムリエ郁子 ああ、​なる​ほど。

大山さん やっぱり​彼らの​土地と​比べて、​日本は​雨が​たくさん​降るし、​夏の​気温、​最低気温は​高いし。​もともとの​課題が​多いんですよね。​その​土地ごとの​テロワールを、​そのまま​自然の​恵みと​して​受け取ろうと​しても、​なかなか​うまく​いかない。​そこで​造り手が、​自分の​感性で、​畑に​立った​時の​気持ちを​大切にしながら、​「この​土地で​どういう​ものを​造ろうか」とか、​「その​ために​どのように​課題を​克服していこうか」と​いった​ことを​考え、​実行していく​ことが、​ワイン造りの​楽しい​ところだなと、​私は​思っています。

ソムリエ郁子 ​今日は​大変貴重な​お時間を​ありがとう​ございました。​実際に​ワイナリーを​見学し、​大山さんの​お話を​お伺い​する​中で、​本当に​色々と​勉強に​なりました。​日本の​土地は、​やっぱり​山が​ちで、​ワインを​造る​上で​過酷な​部分も​多々​あるかと​思うのですが、​そこで​今現在の​ベストを​尽く​そうとされる​姿が​大変印象的で。​業界の​垣根を​超えて、​そういった​姿勢を、​私自身も​見習わせていただきたいと​思いました。

大山さん いえいえ!​こちらこそ​今日は​はるばる​お越しいただき​ありがとう​ございました。

登美の​丘ワイナリー見学を​振り返って​ 〜​「日本ワイン」の​さらなる​可能性〜

フランスの​ボルドーに​醸造技術を​学ぶところから​始まり、​創意工夫を​重ね、​今や​登美の​丘の​テロワールが​存分に​表現された、​世界に​誇れる​唯一無二の​日本ワインを​世に​送り出している​サントリー社。

その​ワイン造りと​向き合う​姿勢からは、​スコットランドから​学んだ​ウイスキーで、​世界最高峰の​「山崎」を​造りだすことに​成功した​当社の​DNAとも​いえる​心意気のような​ものが​感じられました。

海外の​ものを​単純に​真似するのではなく、​これからも、​あくまでも​「山梨県の​登美の​丘ならではの​ワイン」を​体現しながらも、​その枠を​大いに​超えていくのではないか。​今後、​より​一層良い​もの、​ワイン界の​頂点とも​言われる​ボルドーの​ワインとも​一線を​画した、​素晴らしい​ワインが​誕生するのではないか、と​いう​さら​なる​可能性を​感じた​一日でした。

ワインは​まだまだ、​海外で​造られた​ものの​方が​評価されが​ちでは​ありますが、​日本各地の​テロワールが​豊かに​表現され、​和食に​心地良く​寄り添う​日本ワインには、​私たち日本人、​そして​日本を​身近に​感じてくださる​世界中の​すべての​人の​心に​響くであろう、​繊細な​魅力が​あると​思います。

日本で​まごころ​込めて​造られた​ワインを、​日本の​食卓で、​和の​お料理と​合わせて​美味しく​いただく。​そんなしあわせな​ひと時を、​ソムリエ郁子は、​これからも​皆様に​お届けして​まいります。

ソムリエ郁子いちおしの​日本ワイン

日々の​食卓に、​和柑橘の​爽やかな風。

〈サントリー〉登美の​丘 甲州 2021​(白/750ml)

5,940円

はっさく​や柚子などの​和柑橘の​香りと​ほんのりと​した​苦みが​あり、​きりりと​した​酸が​引き締めます。​辛口。​日本の​普段の​食卓に​合わせやすい​1本。​特に​お刺身など生の​お魚にも。​登美の​丘ワイナリー自園産甲州100%使用。​良質な​テロワールで​栽培された​甲州ぶどうを​使用した​素直に​美味しい​白ワイン。​「デキャンター・​ワールド・ワイン・アワード 2023」にて​最高位​「プラチナ賞」を​受賞。

和食と​赤ワインの、​未知なる​マリアージュ。

〈サントリー〉登美の​丘 赤 2020​(赤/750ml)

5,940円

ベリー系や​チェリーなど​赤ワインらしい​特徴の​中に​赤しそ、​桑の​実など​日本らしい​テロワールが​ちらりと​反映された​1本。​プチ・ヴェルド主体と​いう​スタイルも​楽しいです。​すき​焼きなど、​お醬油を​使った​お肉料理に​よく​合います。

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登美の​丘ワイナリーの​フラッグシップワイン。

〈サントリー〉登美 赤 2017​(赤/750ml)

16,500円

ヴィンテージごとに​厳選した​ブドウだけを​使用して​造る、​〈サントリー〉の​日本ワインの​最高峰。​プチ・ヴェルドと​メルロが​主体。​濃い​ガーネット色、​赤や​黒などの​濃縮した​果実と​スパイスの​香り、​程良い​樽香。​長い​余韻が​楽しめるので、​特別な​シーンに​ぜひ。​郁子は​2023年の​幕開けで、​家族とおせちとの​ペアリングを​楽しみました。​特に​ローストビーフとは​最高の​相性。

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次回は、​皆様を​「チリ」の​ワインの​旅へとお連れします。​どうぞ、​お楽しみに!

バックナンバー

ソムリエ郁子との​ワインの​旅​(フランス編)の​思い出は​こちらから。

第1回 フランス篇

ソムリエ郁子との​ワインの​旅​(イタリア編)の​思い出は​こちらから。

第2回 イタリア篇

※表示価格は​すべて​税込です。
※写真は​イメージです。

 

※20歳未満の​飲酒は​法律で​禁止されています。
※車・バイクで​ご来店・​お帰りの方、​20歳未満の​方への​アルコール提供は​固く​お断りします。