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森さんちに、​おじゃましました​ “北欧” 経由、​暮らしを​楽しむ​「これで​いいんだ!」の​アイデアvol.23

はじめまして。​北欧の​旅や​暮らしの​情報を​発信している​森百合子と​申します。​北欧の​国々を​旅するようになって​15年ほどが​経ち、​わが​家には​布や​食器など​北欧モノが​増え、​旅先では​部屋づくりや​暮らしに​役立つヒントにも​たくさん​出会いました。​これから​月に​1回ほどの​ペースで、​わが​家で​取り入れている​北欧経由の​暮らしの​アイデアを​ご紹介していきたいと​思います。​どうぞよろしく​お願い​いたします。

部屋を​心地よく​する​理由

今回は​私の​敬愛する​女性に​ついて​書きたいと​思います。​スウェーデンの​思想家エレン・​ケイは、​19世紀から​20世紀に​かけて​暮らしが​変わっていく​激動の​時代に​教育者と​して、​また​活動家と​して​意見を​発言してきました。​日本では​子どもの​権利や​女性の​生き方に​関する​書籍で​知られているのですが、​じつは​住まいに​ついての​興味深い​考察も​残しています。​ケイが​残した​『住まいの​美』と​いう​論文には、​いまで​いう​雑誌の​ハウツー的な、​趣味の​よい​部屋を​作る​ための​具体的な​ノウハウが​たくさん​記されています。​たとえば、​センスに​自信の​ないうちは​できるだけ天然素材の​家具を​選ぶこと。​色を​組み合わせる​時は​青と​黄色、​赤と​紺などの​補色に​するか、​もしくは​同色の​グラデーションを​選ぶこと……​この​論文が​書かれたのは​1880年ですが、​いま読んでも​参考に​なる​具体的な​アドバイスが​一世紀以上も​前に​書かれていた​ことに​驚きます。

そして​やはり​北欧の​人だからでしょうか、​暗い色の​壁紙や​家具、​また​意味の​ない​装飾には​手厳しく​「そうした​ものには、​病気や​借金同様に​気を​つける​こと」と、​思わず​苦笑​してしまう​辛口ぶりで​バッサバッサと​切り捨てています。​花瓶は​花こそが​主役なの​だから​装飾は​いらない、​絵や​写真を​飾るなら​壁紙は​無地に​すべし、​美術館と​個人の​家は​違うの​だから​過度な​壁画や​装飾は​不要……など​時に​耳が​痛くなるような​アドバイスも​多く、​自分の​部屋を​見回して、​もう​ちょっと​引き算しなきゃと​思う​こともしばしば。​部屋と​向き合う​時には、​いつも​心に​エレン・​ケイ、​なのです。

ケイが​強調していたのは、​美は​贅沢とは​違う、と​いう​こと。​お金が​なくても、​都会に​暮らしていなくても、​美を​みつける​目を​養いさえすれば​誰に​でも​美しい​暮らしが​できる​こと。​そして​手厳しい​ことを​言いつつも、​最終的には​自分の​好きな​もの、​見たい​ものを​飾るべし、​だってあなたの家なの​だから、​とも​綴っています。​その​ためにも​自分の​ための​美を​発見する​目を​養うのが​大切なのだ、と。

花を​飾る​ことや、​本棚を​設える​ことの​大切さを​強調し、​美術館に​行けなくても​自然の​なかや​日常からも​美を​見つける​ことができる、​光の​差し込む明るい​部屋は​身も​心も​健康に​すると​説いた​ケイ。​そうした​彼女の​考えは​その後、​劇的に​変化していく​北欧の​デザインや​住まいの​ひとつの​道標と​なりました。​実際に​北欧の​部屋を​訪ねてきて、​ケイの​思想が​形となって​現れている​ことに​感心します。​「北欧の​部​屋って、​そうだよな​あ」と。

ケイに​惹かれる​もう​ひとつの​理由は、​彼女が​「より​美しく​暮らすことは、​より​良い​社会を​作る​ことに​つながる」と​考えていた​ことです。​私は​仕事柄、​インテリアや​デザインに​ついて​考える​ことが​多いのですが、​今のような​時代に​家や​部屋を​よく​する​なんて​ことばかり​考えていていいのだろうかと​思う​こともあります。​社会情勢や​政治など​不安な​ことも​多い​時代に​あって​「部屋を​よくしよう」なんて​言うのは​贅沢な​ことでは?もっと​優先させるべきことが​あるんじゃないか?と。

快適に​過ごせる​住まいを​誰もが​持てれば、​結果​的に​社会を​落ち着かせる​ことに​つながる。​美しい​ものを​見つける​目を​一人​ひとりが​養って​それを​社会が​共有すれば、​貧困や​犯罪と​いった​社会を​醜く​する​ものを​排除していこうと​いう​心構えに​つながる。​こうした​ケイの​考え方は、​きれい​ごとすぎるでしょうか?

私の​場合は、​自分の​住まいと​向き合って、​住みたいかたちへ​近づける​ことで、​家の​外へ、​自分の​外へと​意識が​向かっていく​感覚が​ありました。​寄付を​したり、​考えを​言葉に​したり、​問題を​より​理解する​ために​本を​読んだりと​小さな​ことですが、​時間や​お金を​使うことが​増えました。​それ以前にも​問題意識は​あった​つもりですが、​自分の​外への​意識の​配分が​変わった​感じです。​以前は​目の前に​片付かない​ものが​山積みに​なっていたから、​何か​違うと​思って​暮らしていたから、​だから​あまり​周りを​見る​余裕が​なかったのだろうか?と、​ケイの​言葉を​読みながら​思うのです。​遠回りかもしれないけれど、​ケイの​思想は​やっぱり​私に​とっての​道標なのです。

美を​みつける​目を​養う​お手伝い

7階 THE HOME

インテリアコーディネーターに​よる​海外の​トレンドも​取り入れた​スタイリング提案コーナーも​ある​家具売場。​見ていると、​自ずと​美を​みつける​目が​養われていく​かもしれません。

バックナンバー

森さんが​教えてくださった、​暮らしを​楽しむ​「これで​いいんだ!」の​アイデアは​他にも​たくさん!

vol.21​「理想の​夏を​過ごしたい」

詳しくは​こちら

vol.20​「コーディネート上​手に​なりたい」

詳しくは​こちら

vol.19​「どう​飾る?​どう​置いてみる?」

詳しくは​こちら

vol.18​「本の​収納、​どうしてますか?」

詳しくは​こちら

vol.17​「デザインが​伝える​もの」

詳しくは​こちら

森 百合子 mori yuriko


北欧5ヶ国で​取材を​重ね、​旅や​暮らし、​デザインの​情報を​中心に​発信。​著書に​『3日で​まわる​北欧』​(トゥーヴァージンズ)、​『北欧​おみや​げ手帖』​(主婦の​友社)、​『いろはに​北欧 わたしに​“ちょうど​いい”旅の​作り方』​(ダイヤモンド・ビッグ社)​ほか。​執筆活動に​加えて、​NHK Eテレ『趣味どきっ!』、​NHK 総合『世界は​ほしい​モノに​あふれてる』など​メディア出演や​講演を​通じて​北欧の​魅力を​伝えている。