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森さん​ちに、​おじ​ゃましまし​た ​“北欧”​ 経由、​暮ら​しを楽​しむ​「これ​でいいんだ!」​のア​イデアvol.51

はじめまして。北欧の旅や暮らしの情報を発信している森百合子と申します。北欧の国々を旅するようになって15年ほどが経ち、わが家には布や食器など北欧モノが増え、旅先では部屋づくりや暮らしに役立つヒントにもたくさん出会いました。これからわが家で取り入れている北欧経由の暮らしのアイデアをご紹介していきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

わた​しの​好​きな​リサ・ラーソン

初めてリサの作品に出会ったのは、最初のフィンランド旅行で訪れた蚤の市でした。年に一度開催される大きな蚤の市には全国からアンティークディーラーが集結し、広い会場内にコーヒーカップや食器類、山積みにされたリネン類、ガラスの鳥に陶器の動物など、かわいいものや美しいものがずらりと、どこまでも並んでいました。当時はまだ北欧のデザイナーやビンテージ製品についての知識がそれほどなく、あまりにも物が多すぎて何を買えばいいのやら、圧倒されるばかりでした。そんななかで目に止まったのが、ころんと丸いフォルムの猫のフィギュア。それがリサ・ラーソンという、スウェーデンを代表する陶芸家の作品であることを知ったのは、帰国してからのことでした。

リサの名前も知らないまま、あの山のように商品が並ぶなかで「このコだけは持ち帰りたい!」と思ったことはよく覚えています。それから彼女のフィギュアが大好きになりました。次の旅ではスウェーデンのリサイクルショップで、もう一匹の猫に遭遇。北欧を旅していると、蚤の市でもリサイクルショップでも、たくさんの商品のなかから、いつだってリサの作品はこちらの目をぱっと引くのでした。

猫との出会いから9年後、幸運なことに、スウェーデンの出版社から出ていたリサ・ラーソンを特集する雑誌の日本語版編集を担当することになり、彼女の膨大な作品群や、作品が生まれた時代や背景についても知ることができました。お店で見かけるかわいいフィギュアだけでなく、ユニークピースと称される一点ものも作っていたこと。凛として、どこか影や憂いも感じさせる作品もあれば、社会を反映し批評するような作品もあり、リサにまつわる本も合わせて読むうちに、着想の奥深さ、多彩さにさらに引き込まれました。

わたしがとくに好きなエピソードは、リサが長く働いていたグスタフスベリ社で「自分の使命は、製造部で働く多くの女性たちの仕事を確保する」と考えていたこと。また職人たちが量産しやすいようにフィギュアの成型見本を作り、必要があれば、こだわりなく修正に応じていたという話。

アーティストとして会社に所属する自分に葛藤しながらも、働いて生産していくことにきちんと向き合い、自身の創作活動と、社会がまわっていくことを両立させていた、稀有なアーティストだったことが伝わってくるエピソードです。

9月18日から公開された、リサの晩年を追ったドキュメンタリー作品『リサ・ラーソンがいた時間』では、仕事と家庭の狭間でも悩んでいた姿が描かれていました。いまでこそ男女平等があたりまえとなったスウェーデンでも、リサの時代には、子どもを育てながら女性が仕事と創作に打ち込むには、大変な覚悟があったのだろうと今更ながら気づかされます。そしてどれだけ才能があっても、家族に理解があっても(リサの夫グンナルは、家事をかなり担当していたようです)、時間に限りがある以上は、すべては手に入らない。偉大なアーティストであってもそれは同じなんですよね。

(配給:ミモザフィルムズ)

あの笑顔とかわいらしい作品の裏側に、どれほどの逡巡があったのでしょう。「いま、わたしがここを離れるわけにはいかない」「家族には申し訳ないけれど、いまこれをやらないと」。わたし達と変わらない悩みや辛さを抱えながら、工房に立っていたのかもしれない。そう思うと、急にリサの存在が身近にも思えてきます。そして時代の変化や会社の業績といった外的な要因で作品が生産できなくなったり、評価されない時期が訪れても、創作をつづけて、作る喜びを手放さなかったリサはすごいなあと改めて思うのです。

写真は、日本語版のリサ特集号雑誌が無事完成したときに、編集長からプレゼントされたMini Zooシリーズの猫とライオンです(スウェーデン限定版の青色なのです!)。出版までの道のりは大変でしたが、チームで一丸となって成し遂げて、猫とライオンを手にした時には、リサにも褒められているみたいで嬉しかったですね。こうして、わが家にまたリサの猫たちが増えました。

リサの作品の特徴といえば、丸みのあるフォルム。代表作のひとつ、ライオンはろくろをひいていた時に生まれたアイデアといいます。長いキャリアのなかで唯一、手掛けたテーブルウェアのシリーズでも、リサは丸みのあるコーヒーカップを作っています。ろくろの前に座って、手のなかで形ができていくのが好きだったと話すリサ。あの丸っこい、リサらしいフォルムを見ていると、働いて、創作して、暮らしていくことがちゃんとつながって、まとまっていくようなイメージが湧いてきます。どんな形でも、どんなペースでもいいから、続けていくことの大切さが込められているようにも思えてくるんです。

昔、読んだ本が、自分の年齢や置かれている状況が変わってから読み直すとまた違った意味をもつように、彼女が残した作品から、これから何度でも新しい表情を見ることができるんじゃないかなと思っています。それにしてもリサの猫たちはほんとに、いい目をしています。

【ご案内】
松屋銀座では、9月25日から『リサ・ラーソン追悼展』がスタートしました。大ヒットしたシリーズから一点もののユニークピースまで、約250点ものリサの作品が一堂に集まっています。じつは先述したリサ・ラーソン特集号の日本語版は、2014年に松屋さんで開催された『リサ・ラーソン展』で最初に発売されました。あれから干支が一周したとは感慨深いです!

丸っこいフォルムの動物たちや、猫たちの目つきも、ぜひ見てみてくださいね。

『リサ・ラーソン追悼展』
会期:2026年 9月25日(金)~10月12日(祝・月)
場所:松屋銀座 8階 イベントスクエア

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森さ​ん​が​教えてくださ​った、​暮ら​しを楽​しむ​「これ​でいいんだ!」​のア​イデ​アは​他​にもたくさん!

森 百合子 mori yuriko


北欧ジャーナリスト、エッセイスト。北欧5カ国で取材を重ね、暮らしやインテリア、旅、映画をテーマに執筆。著書に『探しものは北欧で』(大和書房)、『日本で楽しむ わたしの北欧365日』(パイ インターナショナル)、『北欧のおもてなし』(主婦の友社)ほか。執筆活動に加えて、NHK『世界はほしいモノにあふれてる』『おとな時間研究所』『趣味どきっ!』などメディア出演や講演を通じて北欧の暮らしを伝える。北欧ビンテージ食器とテキスタイルの店『Sticka スティッカ』も運営。