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-松屋銀座開店100年- 銀座三丁目 百年物語 
第10話

おかげさまで​2025年、​松屋銀座は​開店100周年を​迎えます。​ 本連載では、​銀座三丁目で​繰り​広げられた、​松屋ならではの​あれこれを​振り返りつつ、​「松屋らしさ」を​紐解いて​まいります。

銀座もの​語​(が​たり)

「銀座もの語」​ポスター​(1984年)

「銀座もの語」と​書いてある​この​ポスター。​何と​読むのでしょうか?​ はい、​「ぎんざものが​たり」と​読みます。​これは​1984​(昭和59)年に​松屋銀座開店60年プロモーションを​行った​ときの​もの。​銀座店は​1925​(大正14)​年開店ですから​「60周年」ではなく、​「60年」目の​プロモーションです。
この年は​銀座店に​とって​重要な​「勝負の​年」でした。​4月に​プランタン銀座、​10月には​有楽町マリオンに​西武百貨店と​阪急百貨店が​オープンする​予定で、​いわゆる​「銀座・​有楽町デパート戦争」が​勃発したのです。​その​対抗策と​して​打ち出した​年間プロモーションの​テーマが​「銀座もの​語」でした。​百貨店ですから、​あくまでも​「物」で​語ると​いう​ことです。​それを​強調する​ため、​あえて​普通の​「物語」ではなく​「もの語」と​書いて、​何だろう?と​思わせています。
広告コピーには、​「いま、​ふたた​び銀座の​原点を​見つめようと​思っています。​高い​文化の​香りと、​満ちたりた​アートを​感じる、​そんな​空間を​つくりたいと​決心しています。」とか​「新鮮な​商品や​催しを​ご紹介しながら、​素晴らしい​『銀座もの​語』を​お目に​かけます。​」などと​書かれています。
ビジュアルは​その​当時の​銀座通りを​行く、​人力車に​乗った​和装の​ご婦人。​まるで​開店当時から​タイムスリップしてきたかのような​二人です。​この​写真は​合成では​ありません。​銀座通りの​一丁目​(京橋寄り)で、​早朝4~5時頃に​撮影したのです。​スタッフは​全員​徹夜で​夜明けを​迎え、​時々​通る​自動車を​避けながらの​撮影だった​そうです。​すぐ​そばの​交番の​おまわりさんが​親切に​信号を​操作してくれて、​無事何カットか​撮れたのだとか。​いい​時代です。

「東京もの語」​お中元ポスター​(1983年)

実は​「銀座もの語」の​前年に、​「東京もの語。」と​いう​お中元プロモーションが​ありました。​もちろん​世界的に​有名な​小津安二郎監督の​1953​(昭和28)年の​映画『東京物語』に​掛けたわけで、​ひらがなを​混ぜた​「もの語」と​いう​表現は​こちらで​先に​使われていたのです。​モデルの​女性は、​パリコレなどの​国際モデルと​して​一世を​風靡​(ふうび)​した​山口小夜子さん。​この​お中元プロモーション用に​製作した​オリジナル風呂敷を​身に​まとっています。

「トリップトラップ」チラシ(1990年頃)

こちらは​1990年頃の​「トリップトラップ」​(当時松屋が​独占販売していた​ノルウェー製の​ロングセラー子供椅子)の​チラシ。​まさに​「もの」で​語る​広告です。​一つの​商品を​大きく​打ち出しながら、​その​セレクトや​ビジュアルデザインや​松屋銀座ロゴで、​お店の​センスを​示し松屋銀座ブランドを​高める​発信と​なっています。​自信を​もって​お薦めする​商品を​語る​ことで、​百貨店​「松屋銀座」の​テイストや​哲学を​知らしめる。​それこそが​「もの​語」なのです。

ショーウインドウ​(2010年)

「もの」で​語ると​いえば、​ショーウインドウは​その典型。​ファッション、​リビング、​食品など​百貨店で​扱っているさまざまな​商品を​通して、​道往​(ゆ)く​人々に​松屋からの​メッセージを​語りかけています。
東京や​銀座に​こだわり、​目利きの​力で​セレクトした​「もの」を​通して​発信する​ブランディング。​それこそが、​まさに​「松屋らしさ」なのではないでしょうか。

書き手:田代 健
松屋グループの​東京ファッション専門学校校長。​松屋を​中心に、​当グループ一筋40余年の​キャリアを​持ち、​これまでに​「松屋150年史」の​副編集長などを​務める。