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2026.06.10
プライマリーアート入門
Vol.4 ギャラリストに聞く、アートコレクションの始め方
小山登美夫氏インタビュー 前編「好きから始める最初の一歩」
今号からは、いよいよ「どうやって最初の一枚を手に入れるか」について、より具体的に踏み込んでいきます。「現代アートは難しそう」「どこで買えばいいの?」といった初心者の皆さまの不安を解消するため、日本を代表するギャラリストである小山登美夫氏にお話を伺いました。
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小山登美夫(こやま・とみお)
1963年生まれ。東京藝術大学芸術学科卒業。西村画廊、白石コンテンポラリーアート勤務を経て、1996年に小山登美夫ギャラリーを開廊。奈良美智、村上隆をはじめとするアーティストの作品を手がける。日本のアートシーンを牽引する中心的ギャラリスト。主な著書に『お金で見る現代アート』『現代アートビジネス』『その絵、いくら?』など。小山登美夫ギャラリー(株)代表取締役。現在、六本木、京橋、天王洲にスペースを持つ。
1. 「出会いの場」は、身近な場所にある。
“まずは、見に行くこと。そこからすべてが始まります。”
— アートのコレクションと聞くと、特別な知識が必要な気がしてしまいます。何から始めればいいでしょうか?
いえいえ、まずは見に行くことからでいいんです。例えば岡山で開催される「森の芸術祭」や各地で開催されるトリエンナーレのような大きな展覧会でもいい。そこで偶然見て「あ、この人の作品いいな」と思った感覚がすべての始まりです。美術館やギャラリーは“選ばれた人”がみるイメージがあるかもしれませんが、実際に行ってみて「この人の絵、欲しいな」と思ったら、実は買えたりするものなんですよ。
— 初めて購入される方は、どのようなきっかけで一歩を踏み出すのでしょうか?
ギャラリーに直接来るのはハードルが高いかもしれませんが、美術館の展覧会なら入りやすいですよね。そこで作家に惚れ込んで、その感動を持ち帰りたくて作品を求めてギャラリーへ来る。それが一番自然な流れです。
今は美術館も芸術祭も多いので、現代アートに触れる機会は日常の中にたくさんあります。「ギャラリーは敷居が高い」なんて思わずに、まずは足を運んでみてください。いきなり「大作を買う!」なんて意気込まなくていいんです。若い方なら「版画なら自分のお小遣いで買えるかな」というところからスタートしています。
— 小山さんご自身の「最初の一枚」のエピソードを教えてください。
私はリー・ウーファン(李禹煥)の版画が最初の一枚でした。40年ほど前で、当時は5万円くらい。若くてお金もなかったけれど、版画ならなんとか手が届きました。
その後、勤めていた画廊で舟越桂さんの個展があった時、どうしても欲しい作品があった。でもやっぱりお金が足りなくてね。そこで画廊主に相談して、持っていたリーさんの版画を下取りしてもらって、そのお金を足しにして舟越さんの作品を買ったんです。そうやって「買い替え」をしながらコレクションを育てていくのも、アートを持つことの楽しさの一つですね。/)
2. ギャラリーを「相談窓口」にする買い方
“耳の情報と目の情報を合わせて、自分の「好き」を深めていけばいい。”
— 実際に購入を考えた時、ギャラリーでどう振る舞えばいいか迷う方も多そうです。
ギャラリーって実はとてもオープンなところで、何を聞いてもいいんです。ぜひ、玄関やリビングの写真を撮ってギャラリーへ持ってきてください。最近は、ご自宅の壁の写真をスマホで見せながら、「ここに何を置こうかな」と相談される方も多いですよ。私たちのスタッフが、その写真に作品を合成してシミュレーションをお見せすることもしています。そうすると、サイズ感や部屋の雰囲気との相性が一目でわかりますから。
— 予算や場所に悩んでいる初心者へ、具体的なアドバイスはありますか?
有名な作家のポスターから入るのも素敵だと思います。例えばデヴィッド・ホックニーのポスターなどはデザイン性が高く、きちんとした額に入れて飾るだけで空間がシャキッと決まります。まずは2万円、3万円といった、自分の手の届く範囲で「本物」に触れてみること。次は版画、そしていつかは一点もののドローイングを、といった具合にステップアップしていくのも、アートのある生活の醍醐味です。
— 飾る際のルールなどはありますか?
ルールなんて、全くありません。誰かに「正しい・正しくない」を判定されるわけではないんですから。何を買ってもいいし、どう組み合わせてもいい。アートは本来、究極に自由なものです。自分の直感を信じて選ぶことを楽しんでください。
迷った時は、作家の背景にある情報をギャラリースタッフに聞いてみるのもいいでしょう。「どの美術館がコレクションしているか」といった“耳の情報”と、自分の感覚で見る“目の情報”の両方を合わせて、自分の「好き」を深めていけばいいんです。床に立てかけたりして、おしゃれに飾っている人もいますよね。/)
3. マーケットの広がりと「今」買うことの愉しみ
“数年後に世界的に評価されたら「ラッキー」だし、純粋に嬉しい。”
— 今、注目されている作家や、初心者の方におすすめしたい作品はありますか?
注目株でいえば、南谷理加さんや倉田悟さん、福永大介さんなど、国内外で評価を確立しつつある作家が次々と出ています。特にプライマリー(一次市場)で作品を買う面白さは、作家の成長と共に「マーケットが広がる過程」を共有できる点にあります。
例えば、南谷さんの場合、最初は日本で、次にアメリカ、ヨーロッパ、中国へとファンが増え、マーケットが世界中に広がっていきました。さらに世界的なメガギャラリーにピックアップされると、その価値は世界規模で一気に定着します。
— 価値が上がってからでは手が届かなくなる。だからこそ「今」買う意義があるのでしょうか。
そうですね。世界的なマーケットに注目されると、価格が高騰してオークションでしか手に入らなくなることもあります。後になって「あの時買っておけば」と資産性を意識する人もいますが、一番の醍醐味はそこではありません。
価値がつくかは分からないけれど、自分はこれが面白いと思うから買った。そうして手に入れた作品が、後々世界的に評価されたら「ラッキー」ですし、純粋に嬉しいじゃないですか。投資的な視点も一つの側面ではありますが、あくまで「好きな作品を買う」という前提を楽しむこと。プライマリーの作家を見出す楽しみは、まさにそこにあるのだと思います。
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小山登美夫ギャラリー
(六本木・天王洲・京橋)
開廊当初から海外アートフェアへ積極的に参加し、日本の同世代アーティストを国内外に発信。現在も菅 木志雄、杉戸洋、蜷川実花、リチャード・タトル、陶芸アーティストまで幅広く紹介。国境やジャンルにとらわれず、独自の視点で現代アートマーケットの更なる充実と拡大を目指している。
ギャラリー公式サイトへ >
Courtesy of Tomio Koyama Gallery / Works by Keiji Ito
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次回予告 6月公開予定
ギャラリストに聞く、アートコレクションの始め方
現代アートに興味はあっても、実際に購入するのはハードルが高いと感じている方へ。
日本を代表するギャラリスト・小山登美夫さんに、初心者が最初の一歩を踏み出すためのヒントを伺います。
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