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2026.07.15
プライマリーアート入門
Vol.4 後編 ギャラリストに聞く、アートコレクションの始め方 Part 2
小山登美夫氏インタビュー 後編「コレクションを深める視点」
前編では、アートの買い方の入り口について学びました。後編では、より踏み込んだ「アートの価値」の見極め方や、コレクターとしての楽しみ方について、小山登美夫氏にさらに深く伺います。
小山登美夫(こやま・とみお)
1963年生まれ。東京藝術大学芸術学科卒業。西村画廊、白石コンテンポラリーアート勤務を経て、1996年に小山登美夫ギャラリーを開廊。奈良美智、村上隆をはじめとするアーティストの作品を手がける。日本のアートシーンを牽引する中心的ギャラリスト。主な著書に『お金で見る現代アート』『現代アートビジネス』『その絵、いくら?』など。小山登美夫ギャラリー(株)代表取締役。現在、六本木、京橋、天王洲にスペースを持つ。
1. アートと「お金」の、本当の関係
“美術作品は、ずっとあり続けるもの。だから面白いんです。”
— 小山さんの著書『お金で見る現代アート』では、価格の裏側にも触れられていますね。投資としての側面をどう捉えればよいでしょうか。
アートは「資産」として見られる側面もありますが、その本質は「ずっとあり続けるもの」だということです。一度生み出され、誰かに買われた作品は、普通は捨てられることがありません。転売や寄付を経て、必ず世の中に残っていくんです。
中には、ずっと忘れられていたアーティストが、数十年後に突然再評価されて「お宝」になることもあります。この何が起こるか分からないドラマチックな面こそ、美術の面白さです。
— 村上隆氏や奈良美智氏など、後に世界的となる作家を初期から見出してきた小山さんが、見る目を養うために意識していることはありますか?
理屈や頭の良さではなく、存在として「変な人」というか、面白い人であること。やはりアーティストは「変な人」じゃないと面白くないと思うんですよね。社会の中で自分が何を表現すべきか、その「ポジション」を明確に理解している人は、結果として強い作品を生む可能性が極めて高いと感じます。
例えば、もう誰でも知っている奈良美智さん。彼がうちで初めて展示した頃はドローイングの価格は4万円ほどでした。それが今や、アメリカやヨーロッパ、中国と世界中にファンが広がり、マーケットが世界規模になることで、その価値も一気に上がっていきました。/)
2. 信頼関係で築く「ウェイティング」の愉しみ
“作家へのリスペクトを持って接すれば、作品との関係もより深いものになります。”
— 人気アーティストになると、お金があっても買えないという話も聞きます。
そうですね。人気の作家は、展覧会が始まる前に完売していることもあります。それはギャラリーが、作品を大切に持ってくれるコレクターへ優先的に案内しているからで、けっして意地悪をしているわけではないんです。ギャラリーとしては、すぐに転売する人ではなく、その作家を長く愛して持っていてくれる方へ届けたい。
私たちはそのための「調整役」でもあります。上級者になれば、ギャラリーと信頼関係を築き、「ウェイティング(予約待ち)」をして作品を手に入れるプロセスそのものを楽しみます。それは、お気に入りのブランドの新作を心待ちにする感覚に近いかもしれません。
— コレクターとして、より深くアートを楽しむための秘訣を教えてください。
ぜひオープニングパーティーなどに足を運んで、作家本人と会ってみてください。音楽や演劇と違って、美術は作家本人と直接話せる機会が非常に多いんです。
ダミアン・ハーストだってギャラリーのオープニングの時には会場にいますからね。本人に、「どれが一番好きなの?」なんて聞いてみる。作家の背景にある物語を聞くと、絵の解像度がグッと変わります。
また、上級コレクターの皆さんは自分のコレクションの軸を持っています。特定の作家を追い続ける人もいれば、ジャンルで選ぶ人もいる。自分なりの軸が見えてくると、コレクションはさらに楽しくなります/)
3. ギャラリー街を歩き、感性の解像度を上げる
“「まとめて見られる」のは大きな利点。ギャラリーごとの色の違いが見えてきます。”
— 初心者がまず足を運ぶべき、おすすめの場所はありますか?
特におすすめなのは「六本木界隈」です。ここには驚くほど多くのトップギャラリーが集まっています。
例えば、シュウゴアーツやタカ・イシイギャラリーが入るビル(コンプレックス665)や、隣接するピラミデビルにはペロタン、オオタファインアーツ、スカイザバスハウス、タロウナス、カヨコユキ、ハギワラプロジェクト、ヌカガ、ワコウ、キクタケそして古美術のロンドン・ギャラリーといった、世界的に信頼の厚いギャラリーが顔を揃えています。
これほどの質と量がまとまっているエリアは世界的に見ても珍しく、効率的に、かつ安心して現代アートの最前線に触れることができます。
— やはり、一箇所に集まっている場所へ行くのが近道なのでしょうか?
そうですね、「まとめて見られる」というのは大きな利点です。一軒ずつ回ることで、「ここは日本の若手を応援しているな」「ここは海外アーティストに強いな」と、ギャラリーごとの色の違いが俯瞰して見えてきます。
街歩き以外では「アートフェア東京」のようなイベントもおすすめです。まずは多くの作品に触れ、自分の好みの解像度を上げていくのが一番の近道です。
— 最後に、小山さんが考える「アートのある生活」とは何でしょうか。
一言で言えば、「アーティストを尊敬して暮らすこと」ではないでしょうか。好きなブランドの服を買う人は、そのデザイナーの感性を尊敬して身に纏いますよね。アートも同じです。
かっこいい絵を描く人を尊敬し、その精神が宿る作品と一緒に過ごす。そんなリスペクトのある空間こそが、生活をより豊かで誇らしいものに変えてくれるのだと思います。松屋銀座という場所で、ぜひそんな心震える出会いを見つけてほしいですね。
小山登美夫ギャラリー
(六本木・天王洲・京橋)
開廊当初から海外アートフェアへ積極的に参加し、日本の同世代アーティストを国内外に発信。現在も菅 木志雄、杉戸洋、蜷川実花、リチャード・タトル、陶芸アーティストまで幅広く紹介。国境やジャンルにとらわれず、独自の視点で現代アートマーケットの更なる充実と拡大を目指している。
ギャラリー公式サイトへ >
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次回予告 6月公開予定
ギャラリストに聞く、アートコレクションの始め方
現代アートに興味はあっても、実際に購入するのはハードルが高いと感じている方へ。
日本を代表するギャラリスト・小山登美夫さんに、初心者が最初の一歩を踏み出すためのヒントを伺います。
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