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ファッションライターLulu.の「美しいは嬉しい」vol.31

ファッションって知的好奇心を満たし喜びをもたらしてくれるんです。内面のいちばん外側がファッション。

(本記事でご紹介するアイテムは、松屋でお取り扱いのないものもあります。)

2026/08/11

アメリカで開花した美しきコスチュームジュエリー(後編)

こんにちは。

今回はアメリカのコスチュームジュエリーを綴ります(前編はこちら)。

アメリカでの自由な創造

ヨーロッパに不穏な動きが見え始めた1930年代、世界恐慌による暗い時代に、不安を払拭するかのように煌びやかなコスチュームジュエリーがアメリカで人気を博していきます。

〈ミリアム・ハスケル(Miriam Haskell)〉

1899年インディアナ州に生まれ、24歳でNYにコスチュームジュエリーの店をオープンしたミリアム・ハスケル。

彼女のジュエリーが傑出していたのは、その品質の高さにありました。
素材への徹底的なこだわりとワイヤーのみで仕上げられる高度な技術。
ヴェネチアやボヘミア、日本など世界中から取り寄せたビーズ、ガラスの核に魚の鱗から採集した粉末を塗り重ね絶妙な色出しをしたフェイクパール、珊瑚や貝などの自然素材も使われました。

ハスケルの生み出した凹凸のあるバロックパールは、真円こそが真珠という概念を覆します。

パーツの組み合わせには接着剤を使用せず細いワイヤーで留め、ワイヤー処理を隠すために、また肌に当たらないようプレートを貼るという徹底した作業が施されています。プレートそのものにも美しい細工が施され、隅々まで美意識が行き渡っています。

欧州のように厳密な階級がなく、宝石を使わなければ偽物という概念が薄いUSでハスケルが生み出したのは、貴石という石の価値に頼らないジュエリー。

留め具も凝っています。

美しい細工。
卓越した技術と美意識を詰め込んだハスケルのジュエリーは「本物以上に最高のジュエリー」となりました。

〈トリファリ(Trifari)〉

20世紀初頭、ナポリからNYへ移住したグスタヴォ・トリファリが叔父とともに製作していたシルバーのヘアアクセサリー会社がトリファリの始まり。

1930年、カルティエやヴァンクリーフ&アーペルのデザイナーであったフランス出身のアルフレッド・フィリップがチーフデザイナーに就任。ジュエラーにいた彼がデザインするコスチュームジュエリーは、貴石を用いたファインジュエリーと比べ遜色のないものでした。

貴石と同様のハンドセット(手作業で地金に石をセットする高度な技術)が施されたトリファリのジュエリーは、「ラインストーンの王者」と呼ばれるようになります。

マミー・アイゼンハワー大統領夫人が就任式にトリファリのジュエリーを着用したことも知名度を上げる大きな要因となりました。

イタリア職人らしいサテン仕上げの地金が美しいネックレス。

ガラスの供給が少なかった戦時中には、ルーサイトを使用したジュエリーが登場。ルーサイトは1941年にデュポン社が開発した透明度が高く軽量で頑丈なアクリル樹脂で、航空機の窓に使用されました。

独特の滑りがあるルーサイトのジュエリーは「ジェリーベリー」と呼ばれ、トリファリを代表するコレクションとなりました。

コスチュームジュエリーは、芸術性、デザイン性においてファインジュエリーと同等の美的価値があるという認識を広めたトリファリ。
今もなおその美しさは私たちを魅了しています。

〈ハー(HAR)〉

ミュンヘン出身のジョセフ・ハイブロナーがNYへ渡り、エディス・レヴィットとともに1955年に設立した「Hargo Creations(HAR)」。

象牙色の東洋人、龍やコブラなどが登場するオリエンタルムードを湛えたHARのクリエイション。わずか12年ほどの短期間での生産で、資料もほとんど残されていない謎に包まれたブランドとしても有名です。

ケネス・ジェイ・レーンの龍のブローチとともにシノワズリな世界を纏いたい。

ファンタスティックな動物たち

素材の制限から解き放たれ、自由に形つくられた動物たち。素敵!と思ったものを選んで並べてみました。

なぜか、ジュエリーでもオーナメントでも「ノアの方舟」モチーフには吸い寄せられる。2頭のキリンが寄り添うピアスとブローチのセット。

当時の『VOGUE』を賑わせたという〈トリファリ〉のライオンたち。ウィーン出身のデザイナー〈ハッティ・カーネギー〉の緑と赤の馬も愛しい。

尻尾がチェーンなのが素敵だった馬と、お尻とたてがみの細工が美しかったロバちゃん。馬好きだからどうしても馬に目がいく。

青の色出しが美しいディオールのハチと花(右)

自分の「好き」を発見し、愉しむ

市場の価値が固定されていないコスチュームジュエリーは自由。自由とは、その価値を判断するのは「自分」であるということ。自分が好き!と思う心を大切にそれぞれに合った選択するということ。
美しさの判断基準は自分。この作業は個を輝かせる。

美しいブローチやネックレスを前にムクムク湧いてくるのが、「手持ちの服にどう合わせるのか」という楽しい悩み。
いくつか浮かんでいる「合わせ方」をまたの機会に綴りたいと思います。

ヘビ柄のドレスにYSLのヘビのコスチュームジュエリー

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Lulu.


2010年~2021まで11年間、VOGUE JAPAN でブログを執筆。馬と博物学的世界、ムー的世界を愛し、不思議を視たい!と旅に出て、「好き」と「感動」を掻き集める。高校時代に障害飛越にのめり込み、今はたまーに外乗を楽しむ50代。現在はnoteで発信。